QC Ware社 米国特許10614370号

会社紹介

QC Ware社は、米シリコンバレーに拠点を置き、量子コンピューティング向けのエンタープライズソフトウェア及びサービスを提供しています。

特許紹介

2014年のAlice判決以降はビジネス関連発明の特許化が難しいと思われているかもしれません。しかしQC Ware社は、自社のサービスに関する特許化に成功しています。QC Ware社の登録特許(米国特許10614370号)を見てみましょう。クレーム1(下線部は補正箇所)は以下のとおりです。

 量子コンピューティングをサービスとして提供するプラットフォームであって、前記プラットフォームは物理プロセッサ及び物理メモリを備え、前記プラットフォームは、

 クライアント側インタフェースと、

 前記クライアント側インタフェースを介して複数のユーザからユーザサービス要求を受信するフロントエンドサーバであって、前記ユーザサービス要求は、前記ユーザの何れにとっても専用ではない又は前記ユーザの何れによっても直接的にはアクセスできない量子処理デバイス上で実行され、前記フロントエンドサーバは前記ユーザサービス要求を組織する、フロントエンドサーバと、

 サーバ側インタフェースと、

 前記サーバ側インタフェースを介して前記フロントエンドサーバから前記ユーザサービス要求を受信するバックエンドサーバであって、前記バックエンドサーバは、

  前記ユーザサービス要求を量子処理デバイスに適した形式に処理し、前記バックエンドサーバは、特定のアプリケーションドメインにおけるユーザサービス要求を量子処理デバイスに適した形式に変換するための1つ又は複数のプラットフォームライブラリであって、前記1つ又は複数のプラットフォームライブラリは、グラフライブラリ、財務ライブラリ、又は機械学習ライブラリのうちの少なくとも1つを含む、1つ又は複数のプラットフォームライブラリと、

  整数最適化問題を二項最適化問題に変換するモジュール

を含む、バックエンドサーバと、

 量子コンピューティングインタフェースであって、前記バックエンドサーバは、前記量子コンピューティングインタフェースを介して前記ユーザサービス要求を前記量子処理デバイスに送信する、量子コンピューティングインタフェースと、

を実装するための命令を実行する、プラットフォーム。

引用:米国特許10614370号(US 10614370 B2)

量子コンピューティングの分野では、特定の量子処理デバイスのハードウェアアーキテクチャに精通していないと、ソフトウェア開発キット(SDK)等を効果的に使用することができないという課題があります。

この課題に対して、QC Ware社は、バックエンドサーバがフロントエンドサーバから取得したユーザサービス要求を量子処理デバイスに適した形式に変換し、量子処理デバイスに送信するという内容で特許を出願しています。要するに、ユーザが抱える問題に対する量子コンピュータを使用したソリューションをクラウド経由で提供するものであり、ユーザによる直接的なアクセスを必要としないバックエンドサーバ側でユーザが抱える問題を量子コンピュータによって解くことができる形式に変換してくれるというものです。

量子処理デバイスを使用するという点を除けば、通常のPaaS(Platform as a Service)に類似しており、米国特許商標庁によって、新規性(102条)と非自明性(103条)で拒絶されています。

これに対して、QC Ware社は“バックエンドサーバがユーザサービス要求を量子処理デバイスに適した形式に変換するためのプラットフォームライブラリ(グラフライブラリ、財務ライブラリ、又は機械学習ライブラリ)”と“整数最適化問題を二項最適化問題に変換するモジュール”という特徴を加えることによって、通常のPaaSとの差別化を図っています。

本特許によれば、ユーザサービス要求は“プラットフォームライブラリ(グラフライブラリ、財務ライブラリ、又は機械学習ライブラリ)の参照”と“整数最適化問題から二項最適化問題への変換”によって量子処理デバイスに適した形式に自動的に変換されます。その結果、量子処理デバイスのハードウェアアーキテクチャに精通していないユーザであっても、量子処理デバイスによる計算結果を享受することができるようになります。

QC Ware社は、量子コンピューティングに関する事前の経験がないユーザに対して、量子ハードウェアを使用したバイナリ最適化、財務分析、機械学習等の問題を調査するサービスを提供しており、自社のサービスを本特許で保護していると思われます。

なお、本特許は、特許適格性(101条)によっても拒絶されていますが、“物理プロセッサ”と“物理メモリ”という特徴を追加することによって解消されています。Alice判決以降はビジネス関連発明の特許化のハードルが上がっていましたが、2019年1月の審査ガイダンスの改訂以降はこのハードルは下がっており、今後は自社のサービスを特許により保護する企業が増えていくと思われます。


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“QC Ware社 米国特許10614370号” への1件のコメント

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